第2回  

亭主とお客様の動き

茶事の流れ(動線)に沿って計画していくことが使いやすい茶室になる基本です。
お客様は前回コラムに書いたような動きを、いくつかの部屋・庭を通ってしていきますので、亭主はそれに合わせて行動していきます。
お客様の位置や行動には次の動きが隠されていますので、早目の準備が必要です。
ですから茶室の周辺の室(水屋・台所・待合など)と表裏一体となった計画、亭主側が良い動きのできる計画が求められるのです

どんなところから設計をスタートする?

和室での炉を切る場所や、床の間の位置から考えても良い空間構成になりません。
茶事の流れから、亭主側の水屋.台所〜茶室への働きと、客側の動きを考えていきます。
茶室として使えると唱いながら、亭主側の事を全く考えていない部屋が実際にあったりします。
水屋.台所が、茶事を行う茶室の善し悪しを決めるといっても決して大げさではありません。
水屋の位置はとても大切になってきます。それによって曲り茶道口なのか突っ込み茶道口なのかが決まってきます。
(このことは後にお話ししましょう)

次に、床の間と躙り口(お客様の入り口).茶道口の位置関係を考えます。
炉を切る位置と茶道口は重要で、お点前と密接に関係しています。
茶道口が決まらなければ、炉を切る位置が決まりません。
躙り口は、床の間や炉を切る位置とも大いに関係があります。
床の間は位置によって、上座床.下座床などが考えられますが、躙り口の位置(露地からの位置)からも影響を受けます。
客は躙り口から席中をうかがったときまず初めに床の間を見ますので、床の間の位置関係が必要になってきます。
最初に見える床の間のお花やお軸、飾りなどの感激はずっと長く心に残ることが多いのです。
こうして考えていくと、床の間と炉.躙り口.茶道口(水屋)のそれぞれの位置関係は総合的に考えなくてはならないと言うことがいえます。
これが、実際にお茶に接していない人には決して本当の意味での茶室の設計ができない理由なのです。
茶事をよく理解している設計者は、どのようなところから考え始めても、全体として使いやすい茶室を設計できるはずです。


住まいに関する情報をプロのように持ち合わせるのは至難の技ですからアドバイスをもらえるような信頼できるパートナーを見つけることがとても大切なことになります。